06.12.18 MM第158号
【歩いた日】 2006年8月22日(火) [ 3日目後半 ] 【天候】 曇り 【コース及び時間】 八経ガ岳9:43−明星ガ岳−10:51禅師ノ森11:13(昼)−11:30舟ノ垰11:40−12:11楊子ガ宿跡 12:15−仏生ガ岳〈1805m〉−13:19鳥ノ水13:28−椽ノ鼻付近(大雨・落雷のため30分停止)− 14:12釈迦ガ岳〈1800m〉14:14−15:45深仙ノ宿(泊) 【 八経ガ岳〜深仙ノ宿 4時間45分 】 *コースタイムは休憩や写真撮影などを含む私が実際にかかった時間です。 その時の体調や天候によって大きく変わってきます。あくまでも参考タイムです。 |
【感想 等】 3日目は6時前に行者還岳下の行者還小屋から始まった。4時間近くかかってここ日本百名山大峰山(八経ガ岳)まで来た。 前号で書いたように天気も少し回復し、この最高峰から展望を楽しんでいた。 すると急にたばこのにおいがただよってきた。 遅れて着いた九州からの3人組の1人が山頂での一服を楽しんでいた。 私はむっとして黙って出発した。本当に、がっかりした。 山で、そしていろいろなところで無神経にたばこを吸う人が多いからだ。 是非、みんなから10m以上離れた風下で吸ってもらいたいものだ。 私は焼津アルプスなどで清掃登山をしているが、かつてよりは減っているものの山頂や休憩ベンチなどにたばこの吸い殻の多いこと。 私が山頂にいた時間は13分だった。 ただ、山のすばらしいところは山頂だけでないということも知っている。 中腹でも次のビューポイントでも休憩すればいいと思った。 せっかく人に会えたというのに・・・。 1890mの明星ガ岳へはほとんど平らですぐ着いた。左にピークを見ながら下っていく。 トリカブトやアキノキリンソウなどが咲いている。 下の写真のような倒木もあり目を楽しませてくれた。 11時前、禅師ノ森に着いた。朝食も早かったのでここで昼食にした。 尾根道を高度を下げながら歩いていく。 11時半、舟ノ垰と呼ばれている、舟型の窪地に着いた。 またガスがかかり始め、草の緑がとてもきれいだった。 昼食で休んだ後だったが、休憩して緑を眺めた。 12時過ぎ、楊子ガ宿跡に着いた。 そこには新しい楊子ガ宿小屋がある。 水場まで4分と書いてあった。 ここからはまた登りだ。 ザックが肩に食い込み始めたが、大した登りではない。 仏生ガ岳の西側を通過する。 前方の山に低い雲がかかってきた。 そして近くの木々にもガスがかかり始めた。 13時過ぎ、「鳥ノ水」に着いた。 孔雀岳に降った雨がしみこみ出てきたものだ。 おいしい。 それほど天気も良くなく、水筒の水は減っていなかったが、鳥ノ水をたらふくいただいた。 雲いきが怪しくなってきたな、と思っていると雨が降ってきた。 一時晴れて何とか天候はもつかと思ったが無理だった。 雨がきつくなり、ついに合羽を出し着た。 13時45分、孔雀覗。 だんだん、雨が強くなってきた。 そして、遠くで落雷も聞こえだした。 「両部分け」の岩場近くに差しかかった時だ。 雷が孔雀岳に落ちた。 続いて、前の山にも後ろの山にも続けて落ちた。 私は稜線の尾根道を歩いている。 落雷に対して全く逃げ場がない。 幸運なことに標高約1800mの岩場であるので木も生えているし岩陰もある。 私は稜線から3mほど下がったところにある登山道の小さな岩と木の陰にしゃがんだ。 雨は激しくなり、まさにバケツをひっくり返したようなすごい量を頭から浴びせられる。 合羽は着ているといえども滝に打たれる修行僧のようである。 家の窓から大雨を見たことはあるが、大雨に打たれるのは初めてだ。 ここ紀伊山地には標高1200mを超える山が約50座あるという。 そこがまさに雷の巣になっているのだ。 ある時は1分間に3回、またある時は3分あけてというようにあちらこちらで轟きわたっている。 私は以前から雷が鳴ると窓から外を見て雷光との関係から雷の位置を予測するのが好きだった。 する事もないので雷の様子を見ていた。 あるものは遠くに、またあるものは比較的近くに落ちた。 「ランダム」という言葉がぴったりだった。 と、近くで稲光がしたと同時に雷の落ちる音がした。 それと同時に岩に手を付いている右手の指先から弱い電流がビリ−と流れてきた。それはすぐに左手に抜けていった。 何ボルトかはわからないが、雷に感電したのは確かだ。 今いる場所は尾根から3mほどしかない。 しかも近くにやや高いピークがある。 次はそこに落ちるかもしれない。 それで、雷の間隔が5分あいたらもう少し安全な場所に移動することを決めた。 30年間山歩きをしていて1度、雷に遭遇したことがある。 それは南アルプス全山縦走中だった。(かつて、メルマガ67号のmasarusのコーナーで少し書いたことがある。) 静岡から山梨方向に3000mの稜線を歩いていると、黒い雲と共に、雷が近づいてくるのがわかった。 ほぼ平らな、木の生えていない稜線なので、一番高いところは自分だ。 それで、急いで、眼鏡、時計、ザックなど金属が付いている物をその場に置き、少し下がったところにあるハイマツの中に身を潜め、雷が通り過ぎるのを待った。 雷雲がすごい速さで動いてたので、運良く、20分ほどで通り過ぎていった。 あの時は、少しは安全な逃げ場があったし、雷が来るのも行ってしまうのもわかりやすくて良かった。 しかし、今回は辺り一面に落ちている。 またいつ雷がおさまるかもわからない。 もしかすると日没までに山小屋に着けないかもしれない。 そんなことを考えながら待つこと20分、ようやく雷の間隔が5分ほどあき、私がいる近くには落ちなくなった。 駆け足で、もう少し安全な場所を探した。 3分ほどで尾根道から10mほどの少しくぼんだところを見つけた。 その間、もし雷が落ちたら死ぬかも・・・、と思いながら恐怖におののいていた。 相変わらす雨は激しく降っている。 しかし、徐々に雷雲が移動していく気配を感じていた。 2つ目の避難場所も時間が長く感じたが、10分ほどだったろうか。 雨はやまないが雷がおさまり、山々のガスが少しずつ晴れ始めた。 私は釈迦ガ岳めざして歩き始めた。 少しばかりの凹凸も荷物の肩への食い込みも全く気にならなかった。 雷に比べれば大したことはない。 14時過ぎ、釈迦ガ岳山頂に着いた。 山の名前にあるようにお釈迦様が山頂に立っていた(下の写真)。 このお釈迦様が私を守ってくれたのかもしれない。 雲のかかった山々が見渡せた。 ここから下ったところが本日の宿、深仙ノ宿だ。 山道や周りの木々は湿っているので慎重に下る。 3時半過ぎ、ようやく深仙ノ宿に着いた。 ようやく雨が弱くなり、ほっとした。 水場は小屋から水平に200mほど行ったところだ。 小雨の内に水を汲んでくる。 今夜も1人だ。 合羽や濡れた衣服をひもに干して食事の用意をする。 小屋でほっとしたのもつかの間。 また大雨が降り出す。 そして雷も近くで鳴っている。 明るい内に宿へ着けて良かった。 いつまで降り続くのやら・・・・。 日没とともに寝る。 |
禅師ノ森近くの倒木 | 仏生ガ岳過ぎでまたガスが出る |
行者還トンネル西口から大峰山への登山者 | ようやく雷がおさまる(釈迦ガ岳付近にて) |
釈迦ガ岳山頂、お釈迦様が私を守って・・・ | 深仙ノ宿付近から |