07.04.08 MM第169号

   私の出合った日本百名山 by masarus
       
                         

 武奈ヶ岳(ぶながたけ 1214m) [新百名山、二百名山、滋賀県] 

    
  この山の私の印象等は・・・                                  

「 再チャレンジで冬と春を1日で味わった 武奈ヶ岳 」


【歩いた日】     2007年3月25日(日)

【天候】       小雨・霧のち晴れ

【コース及び時間】

 坊村バス停8:54発−10:39御殿山〈1097m〉10:48−11:19武奈ヶ岳〈1214m〉11:31−

11:52コヤマの岳−12:04中峠12:13−12:40金クソ峠12:45−13:10青ガレ13:17−

13:37大山口13:43−14:25JR比良駅

   【 登り(坊村〜御殿山経由) 2時間16分   下り(中峠〜金クソ峠〜JR比良駅) 2時間29分 】

*コースタイムは休憩や写真撮影などを含む私が実際にかかった時間です。
 その時の体調や天候によって大きく変わってきます。あくまでも参考タイムです。

  
【感想 等】

 7ヶ月前、昨年の8月下旬、私は関西に行った帰路、JR比良駅に降り立った。武奈ヶ岳に登ろうと思ったのだ。
そして、登山に必要でない荷物を預けようとコインロッカーを探したが見つからなかった。
 駅員に聞くと、コインロッカーはないという。どうしよう、持っていくしかないと思いながら、バス停はどこか聞くと「ここからバスは出ていない」と言う。そればかりか、山のリフト・ロープウェイも廃止になっていたのだ。それも2年前にである。
 インターネットで入手した2万5千分の1の地形図にもリフト・ロープウェイが載っていたし、地元登山者の作ったHPにも3年前に歩いたリフト・ロープウェイを使った登山記録が出ていた。この武奈ヶ岳は二百名山でもあるし、2年前には岩崎氏の新百名山にも選定されている。中高年を中心とした登山ブームもあるのでそれらの廃止は全く考えなかった。坊村からの登山ルートもわかっていたが、詳しく資料を見ようとしていなかった。

 自分の思い込みと下調べ不足にがっかりし、残念だがこの日の代案は見つからずそのまま家に帰ることにした。

 そして、再度関西に行く機会があった今回、再チャレンジしたのだ。

 他の地域から行く場合、最も簡単なコースは坊村からの往復である。
私も帰宅時間の関係で、そのコースにしようとした。
しかし、調べてみると京都から1時間かかるバスは1日2本だ。朝7時45分の次は14時55分だ。
帰りは9時51分の次は17時21分である。
時間があればこれで十分だが、翌日は仕事がある。なるべく早く帰りたい。

 と言うことで、坊村から登り比良駅に下るコースを考えた。
比良側に下った大山口からの車道歩きは少し気になったが15時半には駅に着くことができるという計画になった。
(この山の登山口までの便が悪くなったので登山者はかなり減ったのではないだろうか。)

 日曜日の小雨の降る中、京都の出町柳バス停からバスに乗ったのは私と老婆の2人であった。
途中、一度は雨がやんだが坊村バス停に着いたときはまた降りだし雨合羽を着ての出発になった。天気予報では、天気は荒れるという。それもまた、「私が出合った日本百名山」である。天気が良い方が快適に歩ける、しかし山にはそうでない日もある。地元の山では、天気予報を見て登るか否かを決めることも多い。しかし、県外では余程のことがない限り歩くことにしている。

 私は9時少し前に歩き始めた。地主神社、明王院前を通り登山道に入る。標高300mの坊村から約1100mの御殿山へ標高差800mの急登である。杉林の中を息を切らしながら30分ほど登ると少しなだらかになる。そして、だんだん広葉樹が増えてくる。
 登山口から1時間余歩くと尾根に出た。そこには下の写真のようにガスがかかっていて30m先が見えない。しばらく歩くと、足下には雪が現れた(写真)。近くにスキー場もあったところである。万が一を考えて軽アイゼンを持参していたので、ほっと胸をなで下ろした。
 (この登りの最中、「能登半島地震」が起きていたことは帰宅後に知った。午前9時42分、輪島市などで震度6強、ここ武奈ヶ岳でも震度3くらいの揺れがあったはずだが私は山中を歩いていて気づかなかった。全コース中、登山道が崩落している箇所が2つほどあったが、新しく崩れたような感じではなかった。)

 あたりはし〜んとしている。
雪の上は足跡がよくわかる。登山道の雪の上には、1日くらい前にできたらしい足跡があった。
ガス、木のシルエット、足下の雪以外は見る物がないのでひたすら歩く。
10時半過ぎ、1097mの御殿山の山頂に着いた。
下の写真のように小さな空間があるだけで山頂という感じはしなかった。ガスがかかり、周りはよく見えずうっすらと木々が見えるだけだった。そこには遭難時用のヘリコプター着陸場所を示すプレートが掛けられていた。(このヘリコプターの絵が描いてあるプレートは山中で数カ所見かけたが、このように地名や記号が示されていれば救助がしやすくなるだろう、と思った。ガスがかかっていたこともあり、私は地図を持っているにもかかわらず途中、現在地が地図上のどこであるか不安になったこともあった。主な場所に山域の概略図と現在地を示す看板があればこのような救助用のプレートも必要ないかな、とも思った。)

 御殿山で10分ほど休み武奈ヶ岳山頂に向かった。ガスはかかったままであったが風が出てきた。かなりの雪の中を4分ほど下るとワサビ峠だった。そこから15分余、なだらかに登って行くと武奈ヶ岳の山頂であった。
 写真のように武奈ヶ岳の山頂には雪はなかったが、強い風が吹いていた。また、相変わらずガスもかかり展望はきかなかった。寒そうに六地蔵がたたずんでいた。
 山頂には6人グループが先に着いていた。前述の雪の上の足跡の人たちだ。今日は誰にも会わないだろうと思っていたのでうれしかった。彼らは車で来て坊村から登り、私より少し前に着き、山頂であまり休まず来た道を帰っていった。

 私も立ったまま行動食を少し食べ10分余休んだだけで山頂をあとにした。
北側の傾斜に雪は多い。また草原にも雪があり、濃霧の中でしかも踏み跡がなければコースを見失うことも考えられる。そんなわけで「八雲ヶ原」に下るのは避け、尾根を進み比良駅に向かうことにした。

 山頂から南東に進みコヤマノ岳(1181m)に向かった。標高差30mしかないので少しの上がり下がりはあったものの、ほとんど平らであった。コースの雪は思ったより多く、深みに足を取られ、雪の中に足がはまってしまったこともあった。
コヤマノ岳には少ししか雪はなかった。武奈ヶ岳から20分、まだたいして時間が経っていないので休まずそのまま歩くことにした。
 そして、標識に従って中岳をめざした。雪、ガス、強風にはほどほど参った。12時過ぎ中岳に着いた。ここからは御殿山に向かうこともできる、3つ辻である。ここまで来るとガスもかかっていない。雪もわずかに残るだけである。腰を下ろし、残りの昼食を取った。
 そこから金クソ峠に向かう。1mくらいえぐられたV字形の山道を下っていく。やがて沢沿いの道になる。そして12時40分、金クソ峠に着いた。地形図上では4つ辻になっているのだが、標識は3方向であった。標識にはいくつもの地名が書いてあり山が深くいろいろなところにつながっていることがわかる。初めての人にとっては全体の地図がほしいところである。よく見ると私が下りたい大山口方向の標識がないことがわかった。そして別の看板で大山口方向の「青ガレ」付近で落石・土砂崩れの心配があるので迂回してほしい、と書いてあった。
 武奈ヶ岳やコヤマの岳あたりにもこの看板があればコースを変更したのだが、尾根伝いに来て青ガレ経由の大山口コースを通りたくて金クソ峠まで来たので下りてみることにした。踏み跡はあり歩いた形跡は十分であった。

 小さな谷状の浮き石の多い急な坂を下っていく。金クソ峠付近からは琵琶湖と比良の町並みが見下ろせる。目的地のJR比良駅は近そうに見えるが、地図上ではかなりの距離がある。
 20分余下ると青ガレであった。初心者には大変であるし危険も多いかもしれないが、私はこれくらいのガレは良く歩いている。(先日も廃道になってしまった焼津アルプスの花沢山から虚空蔵山に抜けるガレ道を久しぶりに歩いてみた。)
 快適に下り続け13時半過ぎ、大山口に着いた。ラミネート加工で雨水除けにした行方不明者を尋ねるポスターが標識に付けられていた。林道まではあと少しだ。
 林道には乗用車が2台止まっていたが、人はいなかった。少し下ると国定公園管理事務所があり、登山ポストも設置されていた。下るに従って木々の芽が膨らんでいるのがわかる。それはやがて黄緑の葉になる。
 そして比良の集落に着くと空ではヒバリがさえずり、モンシロチョウが舞い一面の菜の花畑があった。今日は1日で雨から晴れ、強風が吹く雪の冬から菜の花の咲く春までたくさんの経験ができた。
 14時半、JR比良駅に着き無事に帰路に着いた。途中で出合った登山者はやはり山頂の6人だけであった。

 帰宅後、図書館で月刊誌『山と渓谷』2007年2月号を見たらちょうど、「比良リフト・ロープウェイ廃止のその後」という記事があった。かつては山上駅や比良ロッジなどがあり多いときには年間10万人の人たちで賑わっていたそうだ。それを『自然公園法』にのっとり、比良リフト・ロープウェイ廃止により人工物を取り除き、現状回復の努力をし昔の姿に戻したそうである。
 今回はガスがかかりそれらを見渡すことができなかったが、またいつか復元された姿を見てみたいと思った。
 
坊村から1時間余登るとガスが・・・ 尾根道には雪があった
御殿山の山頂もひっそりと 武奈ヶ岳山頂には1グループいた!
金クソ峠付近からは琵琶湖と比良の町並みが JR比良駅は春の中にあった

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