2008.05.06 MM第214号

   私の出合った日本百名山 他の山々 by masarus
       
                         

バラ谷山(ばらたにやま 2010m) [南アルプス深南部]  [3-1]

その1 南赤石林道の現状は・・・

    
  この山の私の印象等は・・・                         

「 全く手が立たず敗退した 南赤石林道 」

 *下に感想等の文があります。                                         


【歩いた日】     2008年4月26日(土)

【天候】        霧時々小雨

【コース及び時間】


5:17山犬段発=(自転車・徒歩)=5:59千石沢取付−6:13自転車乗り捨て−9:29バラ谷の頭登山口−9:37

崩落箇所通行不能で引き返す−9:40バラ谷の頭登山口


−(ヤブ登り)−11:01尾根道11:07−11:34[2000m地点]11:46−11:49バラ谷山〈2010m〉11:51−14:30鋸山〈1668m〉−14:41千石平14:49−14:59千石沢分岐−15:24千石沢取付15:28−15:34自転車の場所−15:46千石沢取付−16:11五樽沢のコル下−16:41山犬段

   【 林道歩き  4時間23分  】

【登り(バラ谷の頭登山口からバラ谷山) 1時間51分 下り(バラ谷山から山犬段) 4時間38分   合計 10時間52分】

*コースタイムは休憩や写真撮影などを含む私が実際にかかった時間です。
 その時の体調や天候によって大きく変わってきます。あくまでも参考タイムにしてください。

  
すごいところに長い林道を造ったものである 自分が滑り落ちても不思議ではない、ここで自転車を乗り捨てる
所々にあるミツバツツジが励ましてくれるが・・・ 林道にはシカの骨が3体あった
千石沢過ぎはこんな落石・崩落の連続だ この落石現場は全く手に負えず、ここで引き返す

 【感想 等】

 GW、春を感じることができ、混まないところに行きたい、と探し出したのが南アルプス深南部の山。
深南部といってもいろいろな山があるがある程度の手応えのある山として探し出したのが「黒法師岳(日本三百名山)」だ。

 黒法師岳に登るにはいくつかのコースがある。
一番登りやすいのは戸中川からであろう。
山犬段からは蕎麦粒山・三ツ合山・鋸山・バラ谷山と尾根を歩いていく方法と南赤石林道を歩いていって上西平沢から登るコースがある。アルペンガイドのコースタイムで前者が16時間30分、後者が13時間(その内9時間10分が林道歩き)だ。

 林道歩きは好きではないが、かかる時間の少ない13時間の南赤石林道を行くことを選んだ。
今までの経験から登山道は崩れにくいが、林道は崩れやすいことを知っている。昨年も畑薙ダムの先で林道が崩落して赤石岳や荒川岳などへの登山口であるさわら島への送迎バスが不通になり計画を中止した方も多かったのではないだろうか。

 そんなわけで、インターネットで調べたり営林署に問い合わせたりした。
ネット上では有益な情報を入手できなかった。営林署は、昨秋からまだ見に行ってないのでわからないとのことであった。

 これは手強そうだと感じると共に、毎年行われている川根本町の「自然観察会」を思い出していた。
山犬段よりもっと奥の寸又川左岸林道を使い町のマイクロバスで自然観察会に行く催しだ。
この企画はなかなか希望者が多く私は4年前にようやく参加できた。
普段は鍵がかかって入れない林道を住民や自然愛好者のために有効に使うよい企画だと思ったものだ。

 昨秋からの半年で落石はあるだろうが、林道の崩落で全く歩けないことも考えられる。
その場合は林道から山に上がる3カ所のエスケープルートが使える。

 というわけで、できたらあまり歩かなくてもよいようにタウンサイクルの自転車を持って行き挑戦した。
長い行程であるので早朝5時過ぎには出発した。

 山犬段から林道を少し下っていくとゲートがある。
ゲートは歩行者用に隅が通ることができる。
林道初めは両側が木々に覆われたなかなかよい感じのコースである。
しかしすぐに山の左側斜面を切った林道になる。
私が連絡してから営林署で来たようで路面をブルでかじった新しい跡がある。
かじったばかりで路面は柔らかいがなんとか自転車で走ることができた。

 その路面も20分ほどで終わった。写真のような落石だらけの林道になった(写真)。
少し歩けば、落石のない自転車で走れる道になると思い自転車を押して進んだ。
私と同じような考えを抱く人があるようで、林道にはミニバイクかマウンテンバイクの太めの轍が残っている。

 やがてかなりの落石が林道を塞いでいるところに出た。
バイクの轍はそこでUターンをしていた。あきらめて戻ったのか、そこにバイクを置いて先に進んだのかは定かではないが・・・。
私はその先の期待を胸に自転車を担ぎ落石の山を越えて進むことにした。

 千石沢取付までは3回ほど大きな落石を越えた。
1つは倒木もあり落石の中を歩きながら1mほど自転車を持ち上げて越えなければならなかった。
また、林道の崩落で崖下に滑り落ちないように慎重に通過したりした。

 千石沢取付を過ぎるとますます状態が悪くなった。
林道の元の路面が残っているところはほとんどなく上からの土砂の落下か林道の崩落のどちらかである。

 いやいや、この先にはきっと自転車で走れる林道が開けているはずだ、と自分の楽観を信じ自転車を担ぎ進んでいった。

 6時13分、ついに現れた。傾斜が急で自転車を持っては進めない(写真)。
右手で自転車を持ち、左手で斜面をつかみ3分の1くらい進んだが無理だった。
出発してから1時間も経たない内に自転車を乗り捨てなければならないとは残念であった。

 その後も自転車で走れるところは皆無だった。
自転車を乗り捨てて正解だった。
所々に濃いピンク色のミツバツツジが咲き、私を励ましてくれる(写真)。

 また、シカも崩れた斜面の上から何頭も私を見守ってくれている。
ある落石場所ではシカの歩いた跡を通ったりもした。シカが歩けるところなら人間も歩けるように思ったからだ。実際、上手くいった。

 道は行けども行けども同じ繰り返しであった。
遅々として距離は稼げない。
林道脇に雪が残っているところもあった。
標高1300mでも雪がある。車で山犬段に来る途中の林道でも雪を見つけたので心の準備は出来てはいたが・・・。

 掴まるところのない急斜面を滑らないように踏ん張って何カ所も通過した。
出発して2時間経つと右足膝の裏の腱が攣った。
10時間ほど歩いて車で靴を脱ぐときに足が攣ることは時々あるが、まさか2時間でダメージを受けようとは思ってもみなかった。

 3時間近く行った崩落箇所でトラロープが付けられているところが1カ所あった。
きっと古い崩落箇所なんだろう。ここはロープがなくても歩ける。
これ以上急な崩落箇所をいくつも越えてきたのだ。
来た道はもう戻りたくない。帰りは尾根道を帰ろう、と思った。

 そのころには左足膝の裏も攣ってしまった。
痛くて足を高く上げることができないので引きずるように落石の中を歩いていた。
すると今度はS字に曲がった枝に躓いて左ずねを石にぶつけてしまった。
痛くても誰のせいにも出来ない。血が紺色のズボンからしみてきたがあまり見えなくてよかった。

 林道にはシカの骨も落ちていた(写真)。
毛が付いているものもあり計3体見つけた。
年月が経っているようで2体は完全に白骨化していた。
普通の林道なら死体があるだけで埋葬したり撤去するだろう。
いかに人が入らないかということがわかる気がする。

 9時29分、ようやく「バラ谷の頭登山口」に着いた。黒法師岳への登山口まではあと2kmだ。
よし、頑張ろう、と進んでいったが、そこから8分行った所で前に進めなくなった(写真)。

 傾斜が急で足は全く食い込まず表面の砂が滑って谷底へ落ちていく。
下の方にある石をたよりに渡ろうとして石の上を靴の先でかじり足を置くと20cmばかりの石が谷底に落ちていった。
全く手も足も出ずこれ以上は進めない。

 仕方がないので、先ほどの「バラ谷の頭登山口」に戻り、そこから尾根に進むことにした。
「バラ谷の頭登山口」に戻ったのは9時40分、朝出発してから4時間半近く経っていた。計画では黒法師岳への登山口まで全部歩いても4時間半である。いかに時間がかかっているか、である。
しかも両足膝裏が痙攣し、かなり疲れがたまっている。


 今回の「南赤石林道」歩きは敗退だった。
結果論から言えば、
最初から尾根を歩けば、スムーズに黒法師岳に着けただろう。
自転車を使わなければ、担いだり持ち上げたりしなくてすみ、疲れがもっと少なくて済んだだろう。
千石沢で林道をあきらめ尾根道を歩けば、黒法師岳に着けただろう。
歩きながらもいくつもの方法を考えたが、残念ながらの敗退だった。

 帰宅翌日、林道の様子を知らせようと営林署に電話した。
それでわかったことは、5月に1回ブルで路面をかじる。それも323班と書かれた白い札のある林道までという。これは全体からするとほんの一部分だ。あとは林道の崩落で行けない、とのことだ(最初詳しく教えてくれれば・・・)。聞き出してやっとここまでわかった。
多くの林道を見てきたが私はここまで荒れた林道を知らない。しかも、登山ガイドにも書かれていないし、現場の林道入口にも具体的な表示がないのである。
 安全のためにも、是非新しい情報がほしいものだ。

*もし、最近この南赤石林道を歩かれた方があったら様子を是非教えてほしい。

(次号に続く)
 

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