2009.04.12 MM第257号
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【歩いた日】 2009年3月21(土) 【天候】 快晴 【コース及び時間】 坂巻温泉P7:38−7:57釜トンネル入口−8:35釜トンネル出口8:40−9:06大正池ホテル9:11−9:34上高地バスターミナル 9:44−9:55河童橋10:02−10:52明神11:02−12:00徳沢12:20−13:35横尾避難小屋(泊) 【 合計 5時間 】 *コースタイムは休憩や写真撮影などを含む私が実際にかかった時間です。 その時の体調や天候によって大きく変わってきます。あくまでも参考タイムにしてください。 |
釜トンネルを抜けると真っ白な焼岳が姿を現す(写真1) 涸沢から穂高連峰がくっきりと見える(写真2) 河童橋には休日のため多くのハイカーがいた(写真3) 明神まで来る人はわずかだ、静かにたたずんでいる(写真4) 横尾避難小屋前には水場があり助かる(写真5) 穂高連峰に夕陽は沈んでいった(写真6)
【感想 等】 穂高連峰が真っ白な時期の上高地に行きたい、と常々思っていた。 雪の降らない静岡からは真っ白な南部南アルプスが見えるが、それははるか彼方である。 真っ白な山々を近くで見たい。真っ白くなるには木が生えていては無理だ。 森林限界を終える高さがないと・・・。 その最もすばらしい風景の1つが上高地からの穂高連峰である。 そう思うのは、ヤマケイなどの雑誌やTVなどの影響かもしれない。 そんな上高地に行くなら、一般的には正月か春休みかGWだ。 正月やGWは混みそうなので、その中間の春休み、3連休を使って行くことにした。 上高地だけなら日帰りが可能だ。 せっかく行くなら、もっと楽しみたいと、蝶ガ岳を付け加えた。 3月下旬の雪国の様子は静岡に住んでいる私にはわからない。 1年に1度、雪に会いに行く程度では知識としては知っていても感覚的にわかっていない。 雪のない時期なら上高地バスターミナルまでバスが入るが、冬は釜トンネルから閉鎖されている。 車で行く場合、一般的には沢渡のパーキングに車を止め、バスかタクシーで釜トンネルに行きそこから歩くことになる。 だだ、バスの本数が少なく、始発も8時55分である。 それでも十分楽しめるが、もっと早くから歩きたい、とも思った。 そこで、夏の焼岳〜奥穂高までの縦走後にお世話になった坂巻温泉に電話すると、車を1日500円で車を置かせていただけるということだった。 ラッキー!、坂巻温泉は釜トンネルまで歩いて20分の位置にある。ここの駐車場を利用させていただくことに決めた。 3連休の2日目、21日の7時半過ぎ、トンネルとトンネルの間にある1軒屋の坂巻温泉に着いた。 それほど広くない駐車場は満杯であった。「秘湯」としても知られているこの坂巻温泉に3連休の1日目に泊まっている人も多いのだろう。 また、数人山歩きの準備をしていた。私と同じようにここに車を置かせていただいて上高地の散策に出かけるのだろう。 私はすぐにフロントに行き、駐車させていただきたいことを話した。 温泉の主らしき人は、できれば断りたい、というのだ。 電話で確認してあるのに・・・、と思ったが、ぐっとこらえて「そこをなんとかお願いできませんか」と頼んだ。 電話をかけたとき出たのは奥さんの感じだった。 せまい駐車場に、すでにほぼ一杯の車が止まっていれば断りたいというのはもっともである。 主らしき人は、できるだけ奥へ止めることで許可してくれた。 私は本日横尾に宿泊することを話し、1日500円の駐車代金を払い、すぐに出発した。 国道158号線の歩道を歩いていく。 時々車は通るが、歩道は20cmほどの段差があるのがうれしい。 梓川沿いをせせらぎを見ながら歩く。 かつての中ノ湯跡が廃墟のように見える。 普段はバスや車の中から見ていてさっと通り過ぎる風景なので、こうしてじっくり見るのは新鮮である。 梓川も河童橋周辺で見る清流ではなく、濁った黄緑色だ。それは温泉の成分だろうか。 また、滝のようにいく筋か中腹からの流れも見える。 コンクリートか何かで囲われた露天風呂だろうか池であろうか、そんなものの跡もある。 向こう岸に渡り確かめてみたいと思った。 約20分で釜トンネル入口に着いた。 時刻は8時であるが、マイクロバスやタクシーで次々にハイカーが下りている。 3連休の中日、上高地スノーハイクは人気があることがわかる。 みんなヘッドライトや懐中電灯を取り出し、準備をしている。 トンネルの中を覗くと、少しだけ蛍光灯があり赤い非常灯もある。 ぎゅうぎゅう詰めのリュックの一番下に入れてきたので、横着をして出すのをやめた。 これだけ人がいれば、いざというときは彼らの後をついていってもいい。 真っ暗ではなく、なんとか見えそうである、とも思った。 そして、暗い中を楽しみながら歩くのもよいと思った。 釜トンネルは長さ1310m、傾斜11%の上りである。 途中途中に両出口までの距離灯がある。 明るさをもたらしてくれると同時に現在地がわかってよい。 中はライトを付けなくてもなんとか歩ける明るさであった。 約40分かかって出口に着いた。 10数人のスノーハイクの団体が休んでいた。 葉を落としたほうきのような木々以外は白い冬の世界である。 そして、小山の向こうに真っ白な焼岳が顔を出していた(写真1)。 15分ほど歩くと、穂高連峰が見えてきた。快晴の真っ青な空の下、真っ白な山々である。 夏に宿泊した穂高へのアタック基地、涸沢も見える(写真2)。 この角度の風景はいつもならバスからしか見ることのできないものである。 今回は歩きながらじっくり眺めることができる。 この時期でも工事や点検のため時々、車が入っていく。 そのため除雪用のブルトーザーが置いてあり、道路の雪は除雪してある。 しかしそれも大正池手前の分岐で終わりだった。 除雪してある道路は梓川の左岸、ウエストン碑の方向に向かっていた。 大正池には9時過ぎに着いた。釜トンネル入口から1時間余であった。 青々とした大正池の後には真っ白な穂高連山がある。 なかなか素敵な風景である。 大正池も登山者はなかなか立ち寄らない場所である。 上高地バスターミナルまでバスで入り、そこから山に向かうからである。 快晴の中、気持ち良く歩いている。 暖かめのため、朝ではあるが雪はやや柔らかい。 5月のGWの雪質の感じだ、と言っている人もいた。 やがて樹林帯に入り、樹林の隙間から見る真っ白な穂高もいいなあ、と思って歩いていると、上高地バスターミナルに着いた。 シーズンには車で満杯の駐車場は一面真っ白な板と化し、その向こうに穂高が見える。かつてはここにマイカーで入ることができた。懐かしい。 誰もいない白い上高地バスターミナルもなかなかいいものである。 少し休んでから、河童橋に向かった。 ここも静かであるが、よくパンフレットやカレンダーになる穂高のビューポイントである。 やはり記念撮影をしているグループもいる(写真3)。 数十人ハイカーと会ったが、少し私のぺースが速いのか、彼らは大正池でのんびり楽しんでいるのか、上高地一の人気スポットも人は少ない。 いくら見ても飽きない景色である。私も写真を撮りながら少し休憩をした。 そこから先はもっと人が少なくなる。 小梨平キャンプ場にはテントが3つあるだけで物音もしなかった。 梓川の背景には少しずつ見え方が変わる穂高が見える。 やがて目の前に明神岳と前穂高岳が見えてくる。 最初は先端が割れた1つの山のように見えているが、徐々にそれは広がり別々の1つの頂に見えてくる。 もっとも、明神岳は標高が2931mで、前穂高岳は3090mと160mの差があり雪の付き方も全く違っている。 明神岳は雪がほとんど付いていないが、前穂高岳は真っ白い。 11時少し前、明神に着いた(写真4)。 20代の男3人組が休んでいたが、そのうちに明神池の方へ歩いていった。 私は夏との違いを感じながらひと休みした。 辺りはますます静かである。 3連休でもあるし、人気のある上高地である。 もっとスノーハイクを楽しむ人が多いと思ったが、さすがここ明神まで足を伸ばす人は少ないのかもしれない。 釜トンネルからあまり休まずに3時間、往復で6時間になる。 1人徳沢に向かう。 ここまで来て忘れ物に気が付いた。 地図とコースガイドを車の中に忘れてきたのだ。 上高地だけなら何回もあるいたことがあるので地図は必要ない。 しかし、翌日は初めてのコースを通り雪の中、蝶ヶ岳に登るのである。 蝶ヶ岳は3年半前の夏、東側の三股から登ったことがある。山頂の様子はある程度覚えている。 コース案内板があったらデジカメで写し覚えることにした。 12時、徳沢に着いた。 テントが2つあるが静かだ。 徳沢園に近づいていくと犬が吠えてきた。 ガイドブックに冬の間も小屋番がいることが書いてあったことを思いだした。 朝4時に出て長塀尾根をピストンし蝶ヶ岳に登ってきたという人に会った。 まだ12時、今から登れば足跡を頼りに蝶ヶ岳に行くこともできる、とも思ったが食料も重いし予定通り横尾に向かう。 暖かな快晴のため、雪は柔らかくなってきた。 歩いた跡を踏み外すと膝までもぐってしまう。 スパッツを付けないで歩いているので、踏み外したとき靴の中に雪が少し入った。 お腹がすいてきたので昼食休憩にした。 樹林の中の切り株に腰をかけ自然を感じながらおにぎりを食べた。 ここ徳沢には簡単な案内図があり写真を撮ると共に頭に入れた。 (バスターミナル周辺にもたくさんの案内図があるはずであるが、ビニールシートで覆われているのか見かけなかった) 徳沢から少し行くと、岳沢に通じる新村橋だ。 吊り橋の上には親子らしい2匹のサルがこちらを振り返りつつ歩いていた。 私が上高地でサルを見るのは初めてだった。 (帰りにもこの近くの道で3匹のサルに会った。同じサルかもしれないが。) 人がほとんどいない自然の中は動物たちの楽園だ。 雪が前より深くなってきたが踏み跡をたどれば、大丈夫である。 徳沢から1時間15分、横尾の吊り橋が見えてきた。 着いた、坂巻温泉から6時間、歩いたのはちょうど5時間であった。 横尾避難小屋は、うれしいことに小屋前に沢から引いた水場がある(写真5)。 実は数日前、中信森林管理署に電話で尋ねると、「避難小屋は泊まるための施設ではない」ということであった。 この避難小屋は多くの本や雑誌に紹介されているのであるが、考えてみればどうしようもない場合の避難の小屋である。管理する側から言えば、積極的に「どうぞ」とは立場上言えないのであろう。そう考えて、利用させていただくことにした。 小屋には切り株のお金入れがあり、利用者は500円の協力金を払うことになっている。また平成19年度の利用者協力金が13.3万円であることも書かれていた。(ということは、利用者全員が500円ずつ入れたとして、266人が利用したことになる。) 時刻はまだ13時半。 付近を少し散策した。 またまたうれしいことに、バイオを利用したきれいなトイレもあり冬場も利用できる。 (赤石岳避難小屋でトイレが閉まっていて困ったことを思い出した。) その先にある蝶ヶ岳への登山口も確認した。 小屋の中にはリュック2つとテントが張られていた。 テントの若者は15時過ぎ厚手のビニルを持って戻ってきた。 彼は蝶ヶ岳から1時間でシリセードで下りてきたという。 直登なので尻滑りが使いやすいのだ。 彼は、行けるところまで行くと言って、出ていった。 小屋の中にテントを張ったのは寒いからではなく、ねずみ対策だという。 靴の中に入った雪のため湿った靴下を窓越に入る太陽に干して乾かした。 する事もないので早めに夕飯の支度をした。 16時過ぎ、穂高の山陰に太陽は沈んでいった(写真6)。 残念ながら空気が澄んでいるし、太陽の高度もあるので空は染まらず、青いままであった。 常念岳方向へ縦走していた年輩の方が下ってきた。 トレースがないし、天気が崩れるので下山を決めたという。 どこまで天気が崩れるか、心配になってくる。 17時半過ぎ、荷物を広げてあった中年の男性が下ってきた。 シリセードでズボンを破いたことがあるので壺足で苦労して下りてきた、と嘆いていた。 明日は壺足か・・・、とこれまた心配になる。 もう1つのリュックは隅に整とんされているのでデポかもしれなかった。 結局、この日の宿泊者は単独者3人であった。 快晴に中の上高地散策は楽しく一日を終わった。 |