2009.04.20 MM第258号

   私の出合った日本百名山 他の山々 by masarus
       
                         

上高地(かみこうち)・蝶ヶ岳2(ちょうがたけ 2646m) 第2日目

[北アルプス] 長野県


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この山の私の印象等は・・・                              

「 前日とは打って変わり、一転、雨・雪・ホワイトアウトになった 蝶ヶ岳 」

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【歩いた日】     2009年3月22(日)

【天候】        雨後雪・ホワイトアウト

【コース及び時間】

横尾避難小屋6:00発−(直登)−9:30トレースが消える−10:25横尾分岐−(立ち往生)−11:40蝶ヶ岳ヒュッテ(泊)

       【  合計 5時間40分   】


*コースタイムは休憩や写真撮影などを含む私が実際にかかった時間です。
 その時の体調や天候によって大きく変わってきます。あくまでも参考タイムにしてください。

  
急登にシリセードの跡が続く(写真1) ロープがあるということはきっと登山道だ(写真2)
展望が50mくらいしかきかなくなった(写真3) そして、「横尾分岐」の山頂の稜線に出た(写真4)
ホワイトアウトの中、やっと瞑想の丘に着く(写真5) 小屋に中では雪は全く解けず(写真6)

 【感想 等】

 今日は横尾から蝶ヶ岳に登り、蝶ヶ岳ヒュッテの冬季小屋に泊まる。ほぼ直登で夏場で4時間くらいのコースである。
急ぐ必要はないが、何があるかわからない。午前6時から天候が崩れるという天気予報だ。
壺足の可能性も高いし、トレースが消えているかもしれない。
地図を持っていないので心配は絶えないが、これまでの経験を使えば何とかなるだろうと、考えた。

 大阪まで戻るための長距離バスに乗る、と言って朝4時から起き出した人があった。
それにつられて私も起き、6時前には準備ができた。

 明るくなっていたのですぐに出発したが、なんと天気予報がぴったり当たり雨が降ってきた。
霧雨だったが、これから本格的に降ることはわかっていたので小屋に戻りオーバーウェアーを身につける。
もちろん、スパッツにアイゼンは付けている。

 再出発したのは、ちょうど6時だった。
前日に見ておいた登山口から登り始めた。

 道はすぐに急登になった。
前日の暖かさと本日の雨である。
踏み跡を少しでもはずすと膝までもぐってしまう。
しかも急な登りである。
なかなかハードな山歩きだ。

 シリセードを足跡のトレース上でやられると雪がならされて足跡の穴が消されてしまう(写真1)。
そうすると余計に登るのが大変である。

 なるべく足跡を探して登っていく。
当然、下りと登りでは歩幅が違う。
下りの足跡は巾が広く、登りの1歩では穴まで届かない。そんなところは2歩で行く。

 ほぼ直登という感じだ。
ガイドブックに書いてあった赤い布切れや枝打ちの跡はほとんどない。

 時々、木の幹の雪すれすれの所に赤いペンキの丸いマークがある。
やがて一度なだらかになった。そこにはロープが付いていた(写真2)。
多分、登山路にいるのだろう。コースが間違っていないことが確認できほっとする。
そこは「槍見台」だったのだろうか。全く展望はないのでわからない。

 歩き始めて2時間、雪がみぞれに変わってきた。
標高が上がったためだろうか。

 やがてそれは雪に変わってきた。
そして、レースのカーテンを付けたように、うっすら霞んできた。

 雪はかなり降ってきた。
2回ほど樹林帯から抜け、右に回り込んだ。

 9時半、降雪のため、ついにトレースが消えた。
あとは直登あるのみだ。まっすぐ登れば、稜線に出るはずである。
樹林帯を膝まで雪に埋まりながら登って行く。
急坂の登りでは木に捕まらないと上手く足が上がらない。
木が生えているところでは、なるべく木の近くを通り木を利用して登って行く。

 10時過ぎ、今度はもやがかかったようになり展望が50mくらいしかきかなくなった(写真3)。
10時16分、ようやく樹林帯を抜けた。もっと時間がかかると思ったが、早かった。

 歩きやすそうな所を探し登っていくと、運良く稜線に出そうな感じがした。
やや窪んだ感じで、登山道に合流した感じになった。

 そして、「横尾分岐」の山頂の稜線に出た(写真4)。
分岐の標識を見たときはほんとにうれしかった。
自分の直感が良かったのか、偶然なのか、それとも直登していれば誰でもここに出るのか・・・・。

 しかし、ラッキーと思ったのは束の間であった。
稜線は雪混じりの強風で歩くことができなかった。
それほど多い雪の量ではないが、風上である西の方向を向くことが全くできない。
少しでも雪混じりの風が顔に当たれば痛くて仕方ない。
昨日から風が強かった、という情報は得ていたが、これほど強いとは思わなかった。

 私は身動きが全くとれなかったあの10月8日の富士山宝永山を思い出していた。
あの時は立っていられない強風で、腰を下ろしたりうつぶせになると地面の小石が舞い上がり、それが目などの穴や隙間に入ってくる。
手も足も出なく、またじっとしているのもつらかった。

 それに比べると、まだピッケルを突き刺せば何とか立っていられる。
少しだけ風が弱いのかもしれなかった。

 これを「吹雪」と言うのだろうか。雪なし県の静岡に住んでいる者にとってはこんな状態を何というのかわからない。
吹雪の意味を調べると、
「降雪中の雪や積雪した雪が強風によって空中に舞い上げられて視界が損なわれている気象状態のこと。降雪がない場合には地吹雪(じふぶき)と呼ばれる。降雪がある場合でも、空中に舞っている雪の大部分は積もった雪に由来するものである。」とある。
私に襲いかかっている雪は、積もった雪が舞い上がってきたものもあろうか、下界は雨なので降っている雪は空からのものだろうか。

 写真4でわかるようにこの標高2600m余の尾根は森林限界を越えていて木はない。
あるのは岩とかろうじてへばり付いている雪である。

 そのへばり付いている雪で、岩にペンキで書かれた登山路を示す丸印が薄くなっている。
また、私は風下に流されたりして岩場から雪の上に出た。
風が強くなったので雪の中に座り兵士のように、匍匐(ほふく)前進してみた。
ゆっくりだが進むことができる。

 そのうちに辺りが見えなくなった。ホワイトアウトだ。
30mくらいあった視界が10mほどになり、進んでいく方向も全く見えない。
どうしようもないので雪の中に座っているしかなかった。

 時々、30mくらいの視界が回復するが、左手の谷間の向こうに見える小高いところが蝶ヶ岳の山頂なのかどうか・・・。
歩き始めてみたが、もっと遠かった気もする。「横尾分岐」から20〜30分くらい歩いたところだったはずである。
もっと視界が回復するまで待とう、気温はそれほど低くなく、雪の中に寝ていても寒さは感じない。

 10分、20分と過ぎていく。
視界が30mくらいに回復し、少し風が弱くなった時、風上に進んでみた。
あった。少し窪んだ道のような感じのところにペンキのマークが・・・。
やはりコースを外れていた。
(今から考えると、蝶ヶ岳は稜線が広くしかも2重稜線になっているのだ。それが、
この時は思い出せなかった)

 時々見えるペンキの丸印と多くの登山者が歩いてできた窪んだ跡をたよりに進んでいった。
そして見つけた!!ピークを示す円筒形の石造物とポールを(写真5)。
蝶ヶ岳山頂だ。ついに着いた(翌日、それが山頂ではなく、「瞑想の丘」であったことがわかる)。

 さあ、すぐ近くに小屋があるはずだ。
全く見えないが、どこにあるのだろうか。
5分ほど待つと、東側の少し下がったところに蝶ヶ岳ヒュッテの赤い屋根がちらっと見えた。
やった!と、小走りに小屋に向かう。
小屋の上にはすぐに着いた。

 冬季小屋の入口は、トンネルのような所をはって入る、と聞いていたので、その入口はすぐわかった。
ただ、そこまで雪の中をどうしていくのか行き方がわからなかった。
左右に回り込んでみたが、わからなかった。
仕方ないので雪の中をまっすぐ下りることにした。

 結果的には、それが正しい降り方だった。
雪に埋まることなく普通に入口にたどり着くことができた。
箱形のトンネル入口の鉄の扉は大変に重かった。
ピッケルを「つっかえ棒」にし、ザックを先に入れてから中に入った。

 11時40分、ついに着くことができた。
「横尾分岐」から1時間15分かかった。
吹雪とホワイトアウトの中、コースタイムの2倍半以上のかかったが、貴重な体験ができた1日であった。

 小屋の中にはほんのわずかな隙間から雪が入り込み、小さな山を作っていた(写真6)。
また、小屋の中にあったペットボトルの水も半分凍っていた。
動いていたので全く寒さを感じなかったが、気温は低いことがわかる。

 また、服を脱ぐと中のセーターの左胸が雪が付き真っ白であった(わずかな隙間から雪が入っていたのだ)。
そしてカメラにまで雪が付着していて真っ白だった。
スパッツの紐も凍ってほのけなかった。
仕方がないのでガスコンロの火で温めて溶かし紐をほのいた。

 吹雪、ホワイトアウトの中、正午前に着いた山頂であった。
さあ、小屋の生活はどうなるのだろうか。

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