2009.04.27 MM第259号
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【歩いた日】 2009年3月23(月) 【天候】 快晴 【コース及び時間】 蝶ヶ岳ヒュッテ6:25発−6:30蝶ヶ岳〈2646m〉−6:54横尾分岐−(沢筋を直降下)−9:08槍沢沿いの道に合流−9:14 横尾避難小屋9:46−10:48徳沢10:54−11:53明神12:24−13:10河童橋13:12−13:20上高地バスターミナル 13:31−14:09大正池14:14−14:56釜トンネル入口−15:20坂巻温泉P 【 合計 7時間28分 】 *コースタイムは休憩や写真撮影などを含む私が実際にかかった時間です。 その時の体調や天候によって大きく変わってきます。あくまでも参考タイムにしてください。 【温泉】 坂巻温泉(500円) |
ガスの中で降り方がわからなかった高台から蝶ヶ岳ヒュッテを(写真1) 前日、ホワイトアウトで立ち往生をした広い蝶ヶ岳稜線(写真2) 蝶ヶ岳付近から穂高連峰の展望(写真3) 沢筋をシリセードを使いながら下る(写真4) 沢筋は小さな雪崩の巣でもある、雪が落ちてない沢の上部(写真5) 前日の雨が完全凍結の上高地(写真6)
【感想 等】 前日、正午前に着いたが、する事はない。 まずは、食べ損ねていた昼食を食べた。 あいかわらず、風雪は強く、外で唸り声をあげている。 時々、重い冬季入口の鉄の扉さえ動かす音さえ聞こえる。 湿ったパーカーやオーバーズボンを脱ぎ、汗で湿った中に着ている服を乾かそうと考えた。 前日のように太陽は出ていないので、それを利用して乾かすことはできない。 今まで冬季は有人の小屋しか泊まったことはなかったので、それらをストーブの火で乾かしていたことすら忘れていた。 自分のガスコンロで乾かして、万が一、ガスが足りなくなって食事ができなくなったら元も子もない。 靴や上着を脱いでしまうと着るのが面倒で、トンネルをはって外に出てのトイレも困ったな、と思っていたら、屋内トイレがあった。 ほんとにうれしいことだ。 2部屋向こうにトイレがあったのだ。 小屋に入ったとき、少し臭うな、もしかしたら小屋の中でしてしまった人がいるのかも・・・、と思ったが、 それは2部屋向こうのトイレの臭いだった。 時間を持て余し、小屋にあった雑記帳を読んだ。 外は雪があるのに、鉄の扉の向こうに水溜まりができていたこと、長塀尾根を4日かけてラッセルして上がってきたことなどが印象に残った。 下山方法が決まった。 当初予定では長塀尾根を下ろうと思っていたが、やめた。 地図もトレースもない中を長塀尾根を下ることはできない。「わかん」もないので、膝以上もぐる壺足で下ったら何時間かかるかわからない。 前日登ってきた横尾からの直登ルートならまだ体が覚えているし、まっすぐ下るだけである。 トレースがなくて困ったと言えば、正月の仙丈岳(No,78)ではあと少しで山頂という所まで登ったが、雪が降ってきてトレースが消えてしまったので諦めて下山した。 翌夏、また登り、コースを確かめ、次の正月にようやく登頂できたのだ。 夕方17時、天気の回復を祈りながら翌日の水を作るための雪を取りに外に出てみた。 雪はみぞれに変わっていたが、視界は30m。展望なし。 そして、鉄の扉の向こうはノートの通りの水溜まりだった。 不思議だ。 周りはすべて雪景色なのにそこだけ氷の上に水が溜まり風で波立っている。 きれいな水だったのでペットボトルを持ってきて入れ、飲み水用にはコッフェルに雪を詰めた。 夜は羽毛のシュラフだけで寒くはなかった。 風の音が朝方まで続いた。窓の位置が悪いのか、雪のせいなのか、十分な光が入ってこない。 そのため少し暗いが、朝、5時に起きる。 外からくんできた水は上の方がシャーベット状に凍っていたが、雪から作った水はそのままであった。 湿ったパーカー、手袋、帽子など多くは凍ってコチコチであった。 ザックにも雪が付いたままであった。 オーバーズボンを穿こうとしたら、中で足に何か引っかかる。 見ると防水のために張られたシームテープがほとんど剥がれていた。 (使った回数は少ないがもう20年くらい使っているから無理はない。) 靴も、靴ひもも凍っていて靴ひもを固く結ぶことができなかった。 そういえば2月の三方分山[No.208](富士五湖、精進湖近く)でも車の中に置いた靴が凍ったことがあった。 6時25分、外に出た。 穂高連峰には雲が残るものの快晴だ。 前日小屋への降り方がわからなかった少し高い所に登ってみた(写真1)。 蝶ヶ岳の稜線はとても広かった。二重稜線であったことも思い出した。 昨日はホワイトアウトの中、反対側の稜線に行かなくてよかった。 ヒュッテの裏の高台にポールが見える。そうだった、あそこが蝶ヶ岳の山頂だ。 蝶ヶ岳の山頂へ向かう。 快晴、そして360度展望の蝶ヶ岳山頂は最高だ。 広い稜線もはっきり見える(写真2)。 穂高連峰は少しガスが残っているものの真っ白な山並みが見える(写真3)。 横尾分岐に向かう。 少し風はあるものの、歩行に影響があるほどではない。 稜線歩きは楽しい。 低温のため、カメラはすぐに撮影ができなくなった。 デジタルカメラは低温に弱い。レンズが曇らないように温めればいいが・・・。 10月の富士山でも同様のことがあった。仕方がないことなのか・・・。 7時少し前、順調に横尾分岐に着いた。 少し下ると、昨日歩いたコースの右に夏道らしい窪みが見えた。 そこを下ってみることにした。 5分ほど歩くと、もうコースがわからなくなった。 コメツガの樹林帯はどこも下ることができる感じだ。 ただ、降雪のため昨日以上に足がもぐってしまう。 さすが膝近くまでもぐると歩きづらい。 特に、朝方の冷え込みで表面の2〜3cmが凍っている。 もう少し凍っていれば足がもぐらずに歩けるが、その凍った部分を踏み抜き膝近くまでもぐってしまう。 凍った部分がすねに当たり徐々に痛み出す。 サッカーのすね当てを忘れ蹴られたような痛さだ。 それを連続受けたような感じでダメージがどんどんふくらんでいく。 血がにじんでいるであろう痛みになった。 仕方がないので深さ20cmほど踏み込んだ足を少し手前に戻して踏み込み、 楕円形の穴にしすねへのダメージを減らしたり、シリセードをしようと試みた。 水分の多い新雪はかなりの傾斜がないとシリセードができない。 ピクニックシートを敷いて滑ろうとしたが上手くいかなかった。 昨日右に回り込んだことを思い出して、やや右の方に進んでいった。 また夏道のような窪んだ所に足跡らしきものを見つけた。 雪が降ったのにおかしいな、とは思っていたが、やはりシカか何かの動物の足跡であった。 その窪んだところが歩きやすかったので下っていく。 昨日登ったコースとは全く違う。 それは沢筋であった(写真4)。 樹林帯に比べ、沢は木がなく直射日光が当たると共に外気の影響を受け冷えやすい。 そのため雪の上部が凍っている厚さが少し厚く、雪を踏み抜く率が減った。 上から落ちてきた雪の塊もあるが、急な坂のところではシリセードも可能だった。 ピクニックシートはすぐに破けたので片付け、そのまま尻で滑った。 靴ひもも徐々にゆるんできたし、壺足でぶつけたすねも痛い。 シリセードは一番楽な降り方だった。 しかし、その沢筋は窪んでいるので雪崩の危険がある場所でもあった。 小さな雪崩の跡が至るところにあった。 太陽が当たる前であること、気温が低いことなどから今は通ることができる。 だから太陽の高度が上がる前に通過してしまいたいと思った。 あとの心配は、下っていって崖や滝になっていたら通行不可能になるということであった。 シリセードの勢いがつきすぎていれば、そのまま転落もあり得る。 それで、スピードを抑えて下りていった。 やがて、槍沢が前方に見えてきた。何回か歩いたことのある槍ヶ岳(No.54)に通じるコースである。 右にかなり回り込み、全く違う尾根の沢筋に入ってしまったのかもしれない。 でも、無事川沿いの山道に出れば横尾に戻ればいいことである。 沢筋の日溜まりは晴れれば気温が上がる。 もう雪が落ち土が見えているところもありびっくりした(写真5)。 9時過ぎ、槍沢沿いの山道に出た。稜線の横尾分岐から2時間余であった。思ったより早くてよかった。 どの辺に下ったのかよくわからなかったが、数分歩くと横尾避難小屋が見えてきた。 ラッキーであった。下ったのはすぐ登山ルートの横の沢であったのだ。 横尾では、アイゼン、オーバーウェアーを脱ぎ、痛めたすねや足を見るため靴も脱いでみた。 両方のすねからはやはり血がにじみ赤く腫れていた。 そして靴下も血で真っ赤であった。 凍っていて靴ひもを強く締めることができなかったので、ゆるんだまま壺足をやった。 その衝撃や摩擦から足指の関節の皮はむけ、爪は内出血していた。 また、かかともまめができ皮がむけていた。 夢中で下りて来たのでそれらのことが全くわからなかった。 1度、ゆるんだ靴ひもを直そうか、と思っただけである。 それも、スパッツをはずして直すのが面倒で、やめてしまった。 (この怪我は治るのに2週間ほどかかった。 入浴時にしみるのと、皮靴を履けないのが困りものであった。 また、右足の親指先のしびれがなかなか戻らなかったのも困ったことであった。 友人で凍傷にかかった人がいたり、雑誌で読んだりして、対策等は少しは知っていたので、冷えすぎて感覚がなくなると温めたり動かしたりしながら行動はしてきた。 今までにこのようなダメージは受けたことはなかったので、何カ所か表面の皮がむけた程度ではあったが残念であった。) 9時半過ぎ、横尾を出発し徳沢に向かった。 平日なので静かであり人には会わない。 来るときに会ったサルだろうか、3匹が雪の上でなにやらしていた。 徳沢では小屋番のおやじが作業をしていた。通りかかると、私に聞いてきた。 登山者の情報を集めたかったようである。昨日朝、横尾を出発してから誰にも会っていないことを伝えた。 明神には12時頃に着いた。 大学生らしい4人組がいて、徳本峠から霞沢岳に行くと言っていた。入山者もなく、かなりのラッセルであろう。 昼食をとり、上高地バスターミナルに向かった。 昨日の雨が凍りアイスバーンになっている所がかなりあった。 2回ほど雪を踏み抜いたが、アイゼン、スパッツもなく歩くことができた。 3連休より人はかなり少ないがスノーハイクを楽しむ10人くらいの団体や個人客がいた。 安心して歩いていると、蝶ヶ岳からの下山で痛めた足がずきずき痛む。 それでも、14時半には釜トンネルに着いた。 そして、坂巻温泉に15時20分に着いた。 温泉に入れていただいたが、他には入浴客はなく、内風呂、露天とも貸し切り状態であった。 ジャンダルムを歩いた夏同様に、坂巻温泉の秘湯(No.230)を楽しむ。 お湯で足の傷口はしみたが気持ちよく3日間の疲れを癒すことができた。 アクシデントはあったが、いろいろ体験でき充実した3日間であった。 |