05.04.25 MM第98号
【登頂日】 1974年8月18日(日)
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学生時代、42日間かけて10座の山に登りながら北海道一周サイクリングをした。その時の記録の一部である。 テント、シュラフ、登山靴、自転車の修理キット等を持ち、函館から時計と反対周りに2900km走破しながらの山歩きだった。 北海道のまん中にある大雪山縦走のために、稚内から南下して旭川に自転車を置き、前夜は層雲峡を散策しここに泊まった。 翌日、宿で朝食を済まして7時に出発した。峡谷は深いガスの中にあった。天気はだめかと思ったが、天気予報で朝のうち曇りで後に晴れると言ったので信じることにした。 7時20分、大雪山層雲峡ロープウェイに乗り、黒岳リフトを乗り継いで8時に黒岳七合目に着いた。今日の日程は長いのですぐに歩き始めた。8合目を過ぎた辺りからガスは薄くなり黒岳頂上近くになったら真っ青な空が見えてきた。 (雲上の楽園、こんな風景が続く) |
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8時40分、黒岳山頂に着いた。北海道32日目だが、今まで見たことがない青い青い雲1つない真っ青な空がひろがった。 大雪山の山塊だけ雲からすっぽり顔を出し晴れている。まさに雲の上の楽園、といった感じだった。それは、縦走路の多くの高山植物の花々からも感じた印象であった。そこは、標高わずか2000mではあるが、厳しい自然条件のため木が生えていず草原になっていた。 リフト終点では、餌付けされているのか、自然の蝦夷リスが人間を怖がらずびっくりした。 黒岳からは上の写真のような景色を見ながら快適に歩いた。標高差もあまりなく御鉢平とそれに続く山々は私の中のヨーロッパアルプスののどかな風景と結びつき、夢のような美しさに思えた。 (旭岳をふり返って) |
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11時30分、大雪山の最高峰、いや北海道の最高峰「旭岳」に着いた。山頂だけはガスがかかっていて、風でガスがどいたときだけ周りの山々が見えた。それで、簡単に昼食を済ませ下りることにした。 少し下りれば、やはり快晴で気持ちよく歩けた。12時50分、姿見ノ池に着いた。ロープウェイで来れるため、ズック靴だけでなく、ハイヒールの人も大勢いた。今までの楽しい気分が少し幻滅。また、予定よりかなり快適に歩いてきたので時間もあった。そこで、ロープウェイを使わず歩いて下りることにした。 大自然の中をすたすた下りた。姿見ノ池周辺の賑やかさに比べたら麓の勇駒別は信じられないほどひっそりと静まりかえっていた。そこから天人峡への道を探したが、なかなかわからず苦労した。 (勇駒別過ぎの草沼) |
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勇駒別からは何の変哲もない道を2時間半、蛇や信じられないくらいたくさんのカエル、バッタ、赤とんぼに会いながら歩いた。しかし、その先にはガイドブックにも出ていなかった美しい「草沼」という沼があった。そこには美しい花々が咲き乱れ、湿原の感じで、写真でしか見たことがない尾瀬のイメージだった。 天人峡は層雲峡に比べ規模は小さかった。しかし、左の写真の「羽衣の滝」という七段のすばらしい滝があった。今までいくつも滝を見ているが、一番美しいと思った。この滝はエレガントで女性的な美しさであったが、その奧には「敷島の滝」という幅8m、高さ3mの規模は小さいが、水量の多さに関してはどの滝にも負けない力強い滝があった。それは大雪山からの豊富な雪解け水が流れてくるので、いつでもたくましくゴーゴーと爆音を立てているのだ。 天人峡には16時40分に着いた。最終のバス前に天人峡に着いたので宿泊をキャンセルし、旭川に向かうことにした。今回の北海道旅行の最大の目的、大雪山縦走を楽しく終えることができた。大雪山はすばらしかった。大月桂月は言っている。「富士山に登りその山の高さを語り、大雪山に登って山岳の大きさを語れ。余は大雪山に登り先ず頂上の偉大なるに驚き、次に高山植物の豊富なるに驚きぬ。大雪山は実に神苑也。」 (天人峡、羽衣の滝) |